クシーくん

エル・シドのクシーくんのレビュー・感想・評価

エル・シド(1961年製作の映画)
3.8
随分長い事レビュー書いてなかったけど久しぶりに再開してみよう。

11世紀頃カスティーリャ王国に実在したレコンキスタの英雄エル・シッドを描いた長編ロマン大作。この辺の歴史に疎いがなんとなく長年イスラーム系の王朝に支配されていたイベリア半島をキリスト教圏の勢力が奪回していったのは知っていたので、その程度のぼんやりした知識でも十分に楽しめた。

スタジオ・システム崩壊前夜の華々しい大作だ。ムーア人との戦争シーンはエキストラ動員数と掛かった時間と製作費を考えただけで目眩がしそうな豪華さ。
火矢や松明を逃げるムーア人に向かって投げつける演出などはどうやってやっているのか不思議だ。明らかに偽物の火じゃなくて本物らしい火のついた松明を投げているようにしか見えない。危な過ぎる。
馬上槍試合や騎馬武者同士の合戦など、およそ中世騎士物語に期待しうる全てのものを全くごまかしや衒いなしで見せてくれるのは凄い。
ヘストン演じるシッドがモーニングスターを使って戦うシーンはかなり珍しく見応えがある。映像でモーニングスターの実演を観たのは初めてかもしれない。
最初の数十分はプロローグの消化ということもあってやや退屈だが、煌びやかなカスティーリャ王家のコスチュームを見ているだけでも割と楽しい。

チャールトン・ヘストンは髭がないとアングロサクソンにしか見えないが
髭が生えた後は滅茶苦茶ハンサムなのでもうどうでもいい。エル・シドは騎士道物語では典型の勇敢な気質に加え、史実を取り混ぜつつ慈愛とヒューマニズムに溢れた、つまり現代の観客にも共感されやすい理想的ヒーローとして描かれている。やや安易に感じなくもないが、一大スペクタクルな作品に複雑な人間像は不要だろう。このキャラクター造型で間違いないと思う。そして伝説へ…的なラストもまた壮絶。まるでかんかんのうだ。

ソフィア・ローレンは顔のパーツが全て大きい上に、常にバッチリ化粧をしているので美貌を通り越してなんだか怖い。喪服とベールで頭を覆っていても目立ちすぎる。こんな人修道院にいないよ!

見応えたっぷりだけどしかし長い。3時間超の映画はレビューのリハビリとは言えなかなかキツい。
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