菩薩

愛情萬歳の菩薩のレビュー・感想・評価

愛情萬歳(1994年製作の映画)
4.2
陸・海・空からなり、貴方・私・貴方でも私でも無い者が存在する世界の中に、人々は扉・鍵穴・鍵で武装した確固たる空間を築き、そこに電気・ガス・水道を引き、食う・寝る・出すの生活を続け、やがては誰もが死に至る。だがタバコ・ライター・灰皿の様に、何かを常に受け止め続けなくてはならない存在は確実に必要であり、そんな人間が抱える虚しさが誰かに届く事は無い。決して交わる筈では無かった貴方・私・貴方でも私でも無い者がその部屋の中では微かに交わり、そこに漂う「愛情らしき物」の影に強烈なまでの「孤独」が見え隠れする。誰かが泣いているのを見ると人は「どうして泣いているの?」と尋ねたくなるものだが、理由もなく溢れ出てくる涙があるのを知っているし、それを知っている人はきっと弱い者では無い。シャオカンの「早くこうなりたい」ムービーとして観てしまうとキツすぎてキツすぎて泣きたいのはこっちだよ(そもそもお前が泣くんかよ!)となるが、なんにしたって「自慰」ってのは人類史上最大の発明であろう。俺もきっとジジイになっても自慰をし続ける。どこまでも濱口竜介的、勿論逆な訳だけど。当たり前に「あぁ生きてるなぁ」と思うけど、もしかしたらシャオカンだけは最初にちゃんと死ねていたのかもしれない。
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