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愛情萬歳のmanamiのレビュー・感想・評価

愛情萬歳(1994年製作の映画)
4.6
前作よりもさらに言葉を排して描かれた彼らの生活。静寂が語る虚無感はどうしてこんなに重くのしかかるのだろう。自分が感じたことを言葉にするとあれ、わたしこんな風に言葉にしたけれどそれはほんとうにわたしが感じた気持ちだったのだろうか、と思う時がある。曖昧で漠然とした気持ちや心の機微を言葉で紡ぐことは難しい、けれどわたしたちの生活はそんな言葉にできない気持ちで溢れかえっている。孤独という言葉を知っているけれどそれの正体はなんなのか、虚無という言葉を知っているけれど、寂寞という言葉を知っているけれど、わたしたちが日々感じているこの感情はいったい何と形容すればいいのか、わたしのことはわたしが一番よく分かってあげたいのに、結局わたしを一番分かってくれるのはツァイ・ミンリャンなのでは?と思えてきて可笑しい。彼がわたしの言いようのない気持ちを可視化してくれるなら、それでいいんじゃないかと思える。ラストシーンで嗚咽する彼女はわたしだ。これは彼らだけの物語ではなく、生きづらさを抱えたわたしたちそのもの。
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