たーぼーん

極私的エロス 恋歌1974のたーぼーんのレビュー・感想・評価

極私的エロス 恋歌1974(1974年製作の映画)
5.0
至極私的観点においてだが、これを傑作と言わずにいる事はあまりに苦しい。

返還前後の沖縄が舞台となる映画といえば大島渚監督の「夏の妹」だが、「極私的エロス〜」におけるその情景はモノクロだからかドキュメントだからか随分と生々しい。
海・山ではなく、街の中のアパート等で気の荒い者同士の言い合い、かと思うと仲直りしたり愛し合い衝動の行為をしたり、ブラックソウルで踊り荒れ狂う者達、おさげ二つ結びの小林佐智子はマイク持つ手を震わせながら言い合いしその後悲しむ、カメラ持つ原監督はそれらを見て「こりゃなかなかええシーンや」と思いながら収めていく。

東京に戻った彼ら彼女らは、より「生きていく」という事に自覚的になっていく。
そして彼ら彼女らなりに「効率的なシステム」を恐れる事なく、試した。
生きる事だけで精一杯なのかも知れないが、それでも自己表現を忘れる事はなかった。産む側も産まれる側もその前後と比べると数の多い傍若無人な世代層であり、原監督も相当に大胆なものをカメラに収める事が出来た。
武田美由紀だけでなく小林佐智子も産んだ。共同生活の様子を拝見しながら、なるほどこうもポンポンと子供が産まれていたのだなぁ、世代人口多いはすだわと1972年生まれの僕も思ったのだった。
まだ観た事なくて、ここまで面白い邦画があった事に驚く。