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極私的エロス 恋歌1974の小のネタバレレビュー・内容・結末

極私的エロス 恋歌1974(1974年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

とっくに終わってしまった渋谷アップリンクの特集上映「挑発するアクション・ドキュメンタリー 原一男」にて鑑賞。

特集上映はすべての回でトークショーが付くのだけれど、本作は原一男監督の話を聞いたことで、面白さがグッと増した映画。内容は前半は三角関係物語で、後半はその関係から男がはじき出され、女性同士が絆を強めていく物語だという。

原監督と結婚し、3年半過ぎた後、経済的に男に世話になるのは嫌だとして離婚し、もうけた男の子を連れて沖縄に渡ったウーマンリブの活動家・武田美由紀さんが、自力出産する自分の姿を見たいから撮って欲しいとお願いしたことが本ドキュメンタリーのきっかけ。

原監督は考えたそうだ。クライマックスの出産シーンにもっていく過程で、3年半の間にあった非難されるされるようなことを、つまり人に聞かせたくないようなことを美由紀さんは追求するだろう、果たして自分はそれに耐え、カメラを回し続けることができるのだろうか、と。

そしてドキュメンタリー監督の性なのか決意した、耐えよう、カメラを回し続けよう、カメラは止めない、と。

美由紀さんが原監督のことをボロクソに言えば言うほど彼女が光輝く一方で、原監督は反論できないという構図。ある時、黒人兵と同棲しているという手紙をもらいインタビューに向かう。まだ恋愛感情が残っている中で、嫉妬の気持ちが出ないか心配だったが、男性も含めたインタビューの最中、感情の高ぶりはなかった。

ところが、さらに踏み込んだ話しを聞くため美由紀さんと一対一になるとそれは一気に爆発する。たまたま見学に居合わせた友人にカメラをまかせ、原監督は突如、画面に登場する。本作ハイライト場面のひとつ。

屈辱を受けた原監督は逆襲に転じる。現在の妻で、原監督が所属する失踪プロダクション代表の小林佐智子さんを映画のためと口説き落とし、録音助手として連れていく。狙い通り嫉妬する美由紀さん。かくして三角関係の物語が出来上がる。

しかし、女性の間でしか共有できない出産を控えていたからか、美由紀さんと小林さんの関係が少しずつ変わっていく。そのことが明らかになるのが、大半の人が意図した映像と勘違いする、原監督「一世一代の不覚」のピンボケ出産シーン。美由紀さんが陣痛の苦しみに耐えるために叫んで呼んだのは「小林さーん」。

ああ、これこそ人生の深淵、1970年代の男女関係の空気感(らしい)。終盤のもう一つの出産シーンでは原監督、すなわち男の存在感は薄れ、女性と子どもたちの共同体があるのみ。

ということで、人に見せたくないものを映像化することを通じて、人間と世界とかかわり、その真理の一端を垣間見せてくれる原監督の作品の中でも結構好きです、本作。

●物語(50%×4.5):2.25
・聞かないと良くわからないところがアレですが、物語としてかなり面白い。

●演技、演出(30%×5.0):1.50
・空前絶後の作品における2人が凄いとしか。

●画、音、音楽(20%×2.5):0.50
・話を聞くとピンボケが残念過ぎる。
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