たた

トライアングルのたたのレビュー・感想・評価

トライアングル(2009年製作の映画)
4.2
「永劫回帰とはかくも恐ろしきものなり」

嵐でヨットが転覆、漂流しまして。
通りかかった客船に助けを求めようと乗り込んでみると、おや?
何かしらの気配はするものの誰もおりません。

実は覆面の殺人鬼が潜んでおって、仲間達を次々と殺していく。
1人生き残ったジェスは、殺人鬼と戦い海に落とすのでした。

と書いただけだと、様相としてはありがちB級サスペンスですが。

ここからループします!
(今ここからと書きましたが本当の始まりは、…)
(今始まりと書きましたがそもそも始まりって、…)

殺人鬼を落としてひと安心?、ところが海上を見ると、漂流して助けを求めるさっきまでの自分たちの姿が!
さっきと同じように船に乗り込んでくる彼ら。
とまどいつつ身を隠しながら彼らを見つめる「2周目の自分」。

「1周目」で拾った鍵を「2周目の今の自分」が落とし、1周目の自分がまた拾うという不思議なループ世界。

1周目の仲間がさっきと同じように殺されていくところを、防ごうと動く2周目の自分ですが…

いったいジェスの身に何が起こっているのか?
やがてループは3周目に突入…。

・・・

ただ同じ時間を繰り返す、やり直す、っていうタイプのいわゆるタイムリープとは違って、
1周目・2周目・3周目…が複雑に絡み合って影響し合っているのが、話を見応えのあるものにしています。

そして、もう何度も同じことが繰り返されているのを示唆する、
無数のメモ、
無数のペンダント、
無数の〝クローンではない同一人物〟の死体。

無数っていうのが文字通り無数なんです。
1つ足しても増えないし、1つ引いても減らない。
「始まり」の概念がない無数の世界。

ハゲのパラドックス理論みたいなもんですかね。
つるっパゲに毛を1本生やしても、ハゲであることに変わりはなく、であるならば、何本生やしてもハゲはハゲなのです。つまり人類みなハゲなのですザマーミロ。

…ハゲの話はまあ置いといて、
このループ世界に始まりがないことを考えるととてもモヤモヤします…
終わりがないのは、まだ終わりが来てないだけと考えれば腹に落ちますが、
あったはずの始まりは一体どこなのか、考えると眠れなくなりそうです。

ラストで、ループから抜け出せたように見えたジェス。
ここで起こる出来事は、この無限の無数の地獄ループに入ったきっかけのようなものとして示されますが、
それでもやっぱり「始まり」は謎のままなのです。
たた

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