螢

戦艦ポチョムキンの螢のレビュー・感想・評価

戦艦ポチョムキン(1925年製作の映画)
3.3
古典には手に取るべき意味も価値もある、ということを改めて体験した作品。
100年近く前に作られた作品とは思えないほど、刺激と迫力とエネルギーに満ちた作品で、まじまじと観てしまいました。

複数の異なるシーンを細かくつなぎ合わせたカット割りにより、感情の強調や、新しい意味の生成をし、鑑賞者に訴える「モンタージュ理論」を実践・確立した、映画の教科書的作品として知られる、1925年にソ連にて制作・公開された、サイレント映画。

日露戦争敗北直後のロシアは戦艦ポチョムキンにて、「ウジ虫入りスープ」をきっかけに、虐げられてきた労働者階級である水兵は反乱を起こし、上級将校の殺害・監禁事件を起こした。
そして、戦艦の寄港した港町オデッサでは、市民の蜂起をきっかけに、帝国側であるコサック兵による市民の大虐殺が起こり…。

映画史上「最も有名な6分」とされる「オデッサの階段の虐殺」のシーンは、血が苦手な私にとってはつらいのだけど、それでも、細かいカット割りによって高められた緊迫感と、それなのに滞りのない流れのよさに惹きつけられてしまいました。

大階段を逃げ惑う市民、撃たれる子供、瀕死の子供を抱えあげて兵士の前で命乞いをする母、血まみれで咆哮をあげる老婆、銃声に倒れる母親、赤ん坊を乗せたまま階段を駆け下ちていく乳母車、足下の市民の死体には目もくれず列をなして階段を下りながら銃を撃ち続けるコサック兵…。

つなぎ合わされる画面が、残虐さや悲しみをこれでもかと強調します。モンタージュ理論ここに極まれり、という場面ですね。

モンタージュ自体は現代では当たり前の技法となりましたが、それでも、このオリジナルの力強さは他に類を見ない見事さです。

無声映画ならではの、声がない分演技の振りが大きい絵画的な要素、紙芝居のように挟み込まれる字幕カットなどが、これまた独特の味を生んでいます。

映画史上の価値につられて鑑賞した作品でしたが、そんなの忘れるぐらい、夢中でみた作品となりました。
螢