意外にも評論家からは評価が低い作品だが、私はヒッチのベスト5に入れるぐらいに大好きです。
原題のSpellboundは、まさにイングリット・バーグマンがグレゴリー・ペックに「魅せられた」事なんだけど、邦題の「白い恐怖」っていうのは微妙で、「白いものに刻まれる、わだち、または溝に恐怖を感じる。」の方が合ってるかなと思う。
その「わだち」に恐怖する男に、どこまでもついて行き、治そうとし、真犯人さえ暴こうとするバーグマンは、とても行動的で魅力的なヒロインで、とても素晴らしかった。
ヒッチ曰く「普段、冷静で硬いイメージの女性が、いきなり情熱的になる事が、凄く魅力がある。」と語っている。いわゆる「ツンデレ」ってやつですか。
有名な牛乳や拳銃のショットや、逃げる二人が追い込まれていく様など、サスペンスとしても見どころ満載だし、ラブロマンス映画としても、素晴らしいと思う。最後のオチも完璧でした。
当時はニューロティック映画と言って、精神分析を主題とした映画が流行っていて、ヒッチもそれに追随したのだろうが、やがて「サイコ」や「マーニー」といった作品も生み出し、ヒッチの得意分野となる。
最後に有名なダリのシーンだが、さすがシュールレアリズムの申し子だけある。いっきに引き込まれた!