樹

岸辺のふたりの樹のレビュー・感想・評価

岸辺のふたり(2000年製作の映画)
4.9
洗練された図 満ち足りた余白 ミニマル

急に旅立ってしまった父の帰りを、ずっと待ち続ける娘の一生。

余白を活かした描写で画面の外側にまで空間が広がって感じられ、臨場感が満点です。
けっして楽に作るためのシンプリシティでは無いでしょう。
湿度や風の流れまで感じられる、巧みな絵です。

個人的に特に好きなのは、サギが立っていて水面に映っている様、
シルエットの鳥の群れが空を舞う様です。
僅かな図で空間の広がりを描写しきっています。

顔の表情はありませんが、感情が伝わってくるのも卓越した手腕の証でしょうか。

ただ、最後娘が若返りながら父に抱きつく時、なぜ子供にまで戻らなかったのか分からなかったです。父と別れた時の姿まで戻れば、父を想っていた時間の長さが伝わり、泣けたと思いますが。
大人、子供についての認識に文化的な差があるのでしょうか?
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