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ティファニーで朝食をのいとJのレビュー・感想・評価

ティファニーで朝食を(1961年製作の映画)
4.0
自称作家のポール(ジョージ・ペパード)は新しく越したアパートの階下に住むホリー(オードリー・ヘプバーン)と出会う。ポールは自由奔放に生きるホリーに惹かれていくが、彼女の唯一の望みは戦争へ行った兄のフレッドを退役させて一緒に暮らすことだけで、普段はお金持ちにすりよって遊んでは、ほとんどの男を「ネズミ」呼ばわりする。2人は仲良くなるが、徐々にホリーの過去や隠しごとが明らかになり、彼女は南米へ発とうとする。そこで彼女がもらっていたお金の出元から事件が発生。気ままなホリーに振り回されるポールは彼女を射止めることができるのか、彼女は人を愛し、自分から逃げずに生きることはできるのか、、、という話。

脚本だけ見るとあんまりおもしろくないのですが(僕がうまく言語化できていないだけかもしれませんが)、この映画の魅力はホリーのキャラクター、つまるところオードリー・ヘプバーンにつきるんじゃないかと思います。それがいちばんわかるのが、やっぱり彼女が「ムーン・リバー」を歌うシーン。純粋で儚い歌声は、彼女の自由奔放な性格の裏側にある憂いのようなものを感じさせて、ホリーのキャラクターに深みを与えます。もともとホリーの役はマリリン・モンローが演じるはずだったのですが、このシーンに関してはモンローじゃ成立しなかったでしょうね(そもそもモンローだったら「ムーン・リバー」も生まれていなかったはず。作曲したヘンリー・マンシーニはヘプバーンにずっと片思いを寄せ、さらには彼女の死後、後を追うように亡くなった人なので)。

それから、彼女のキャラクターを強調するのが、彼女の飼う猫です。猫は自由気ままに生きているけど、都会の中では誰かに飼ってもらわないと生きていけない。彼女も同じで(だから多分男を「ネズミ」と言うんだろう)、自由を望んでいるけれど、自由だけでは生きていけないことをよくわかっている。ラストシーンのポールの台詞にはこのあたりが一気に凝縮されています。

単に男たらしのホリーが人として成長するというだけの映画だったら、こんなに語りづがれる名作にはなっていないのでしょうが(ストーリー自体はそのようなところなのですが)、相反する人の気持ちを音楽と猫でうまく表しているところにこの映画の魅力があるんじゃないかと思いました。
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