COZY922

ブルーバレンタインのCOZY922のレビュー・感想・評価

ブルーバレンタイン(2010年製作の映画)
3.8
価値観の違いが修復できないほど大きな亀裂になる時。それは無理に違いを埋めようとした時じゃないだろうか?相手の価値観に合わせようと無理をするとストレスになる。自分の価値観を押し付けると、どちらが正しいかの議論になり険悪なムードになる。価値観が近いに越したことはない。でも、違う価値観の相手を違う価値観のまま認め合えたら、それはかなり幸せなことだと思う。

本作の2人は育った環境も学歴も違えば、物事へのアプローチや考え方にもかなりの相違がある。決められた手順へのこだわりや目的意識が強いシンディと、朝の出勤時にも子供とじゃれ合い時間を気にかけないディーン。かつては医師を目指し今もキャリアを大事にするシンディ。高校中退, 家族第一, 仕事は食べていける範囲でやればいいと考えるディーン。

どちらが正しいわけでも間違っているわけでもない。ただ違う。そして2人は自分の価値観を主張する。出会った頃はさほど障害にならなかった違いが、時と共に寛容度が狭くなり、ぶつかり合い、我慢の限界を超えてしまう。相違点が多いことは最初からわかっていたはずなのに、彼らはいつから認め合えなくなってしまったんだろう?

映画は2人の出会いと別れの時を並行して描き、その間の数年がどんなものであったかは不明だ。だから推測の域を出ないけれど、2人は寛容度が変わったというより、そもそも結婚の時点でボタンの掛け違いがあったと思う。確かに2人は恋に落ちた。でも、あの 望まない妊娠が無かったら彼女は果たしてディーンと結婚していただろうか? 一連のくだりは、自分のことを好きな男性を追い込み 自分が言わせたいセリフを言わせたようにしか見えなかった。。。最初から相容れないものを感じていたけど、その時点ではディーンはシンディにとって元カレよりもbetterな安住の地だった。

人との関係は難しいようで易しく易しいようで難しい。相手に関心を持ちつつ、考え方や嗜好の違いを受け入れ認め合えればいいけれど、現実ははるかに複雑で一筋縄ではいかない。相手も変わるし自分も変わる。2人だけの問題にとどまらない事情もあるだろう。許すこと、認めること、受け入れること。そして最後は、(この一言で片付けたくないけど)相性なんだと思う。

ライアン・ゴズリングの役作りが素晴らしく、見ていられないほど痛々しかった。切なく苦く美しいラストが尾を引く。