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ブルーバレンタインのdeenityのレビュー・感想・評価

ブルーバレンタイン(2010年製作の映画)
4.4
実はずっと前に購入していて見よう見ようと引き伸ばされてた本作。ちょうど今年でいうと類似作として『ちょっと思い出しただけ』なんてのもあったし、今年中には見ようと思ってたので今回鑑賞しました。

もうこの手の作品は本当に心エグられるんですよね。ライアン・ゴズリングもミシェル・ウィリアムズもどちらも大好きな俳優さんですが、その二人が演じるディーンとシンディの恋の始まりと終わりを描いたストーリー。
それこそ時間軸をいじくってシーンを対比させながら見せていく演出ってここから来ているのでしょうし、本作が名作と言われるのも納得でした。

ただ、本作が巧みなのは演出だけに限った話じゃなく、やはり見る人の心を鷲掴みにするような生々しいまでの演技なんですよね。
というよりももはやあれは演技を超えていて、結婚して愛が薄れていき、もうどうしようもなくなってしまった2人の関係そのものであり、冒頭から漂う不明確なのに決定的な重苦しさがたまらなく居心地が悪くて、とても他人事とは思えない。むしろ自分のことと照らし合わさずにはいられないほどの切なさで胸が苦しくなりました。

しかしまあね、こういう思いって経験があるからこそブッ刺さるわけですが、じゃあ例えばこの2人に至ってはどうしたらよかったかってそれを明確に描いていないのがいい意味で嫌なとこなんですよね。

とにかく2人がすれ違いまくってるのはそれこそ2人の言葉の端々を取っても簡単に見えてくるわけで、カメラワークとかも含め、とことん彼らは向き合わないわけですよね。

でもディーンはそれに対して向き合おうとは働きかけていて、でもシンディはどうにも取り返しのつかないところにまで来ていて、じゃあディーンが良くてシンディがダメかと言われるとそれも違って、職場に押しかけるとか暴力とかはどう考えてもクソ野郎の所業だからフォローのしようもない。

結局恋の始まりと終わりを描く作りである以上、その過程のところが見えないからこそそこまでの数年間の小さなズレの積み重ねを推測することしかできないわけですよね。
そうなると当然もう始まりの段階からその原因は描かれているはずなんですけど、どれも決定的ではない。
だからもう苦しくてたまらなくなるんですよね。それはもうこの2人だからこそ惹かれ合ったのだろうし、この2人だからこそ反発し合ったのだろうから。

自分も正直ずっと同じような感じで、何度も何度もぶつかって、もう合わないのだろうと思いつつも、それでも今があります。でもまあちゃんと言い合えるだけまだマシなのかもな、とも思う。ある意味それは良くなるための努力でもあるし、あるいは本作の彼らのようにただの折れない自己主張なのかもしれないけれど、とにかく話し合える分マシなはずだ。そう信じたいし、こうならないための努力をしよう。
ただ、じゃあそのためにも久しぶりにホテルでも誘って、とは到底思えないほどあのくだりはきつかったですが笑

ただね、ラストカットだけは暴力的な殺傷力を持ってたな。同じくらいの子どもがいる我が身からすると、もしああなってしまうとどうなるのだろうか。フランキーは大人になったら父親のことなど忘れてしまうのだろうか。
そう考えると訳もなく涙がこぼれそうになりました。
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