ヴェルヴェっちょ

ブルーバレンタインのヴェルヴェっちょのレビュー・感想・評価

ブルーバレンタイン(2010年製作の映画)
4.3
やられたぁ。ノックアウト。
俳優の演技も、編集の妙も堪能させてくれる秀作でした。

ペンシルベニア州に住むディーン(ライアン・ゴズリング)とシンディ(ミシェル・ウィリアムズ)の夫婦は、娘のフランキーとの3人暮らし。
長年の勉強の末、資格を取って病院で忙しく働く妻・シンディに対し、夫・ディーンの仕事は芳しくない。 お互い相手に対し不満を抱えているが、口に出せば平和な生活が壊れてしまうことも知っている。
出会った頃の二人は若く、お互いに相手に夢中で毎日が輝いていた。
そんな二人の過去と現在が交錯しながら、愛の終わりが近づく…。

ほとんどのラブストーリーが目指すのは、「いかに恋愛を成就させるか」だと思う。そこには禁断の愛であったり、周囲の無理解・反対であったりと、数々の困難が立ちはだかるのが定石。
でもこの映画が描くのはそこじゃない。恋愛が成就した後、いかにそれを持続させていくか。恋愛成就後の結婚生活を描かれても、特に劇的な変化が起こるとは限らない。ともすれば単調な描写が延々と続く、ということになりかねない。恋愛成就後のことが映画になりにくいのは、そういう背景があるからだと思う。

しかしこの映画は、果敢にもそれを取り上げる。別れが人をどれほど打ちのめすのかを余すところなく描き出していく。容赦なしだよ。

この映画が巧みだなぁと思ったのは、過去の馴れ初めのエピソードを交錯させることで、ダレないようにしているところ。
ただ残酷にも、馴れ初めが輝かしい分、別れの悲壮感が一層際立つという皮肉。作り手もそこをわかって描いているのだろうからニクい。

ライアン・ゴズリングのダメ夫ぶりも鼻について仕方ないのだけれど、出色なのはミシェル・ウィリアムズの体当たりの演技。ハリウッド女優は高嶺の花のイメージがあるけれど、彼女は本当に身近にいそうな女性。しかも演技がこんな長けている人って、いそうでいない。

なかなか類似の作品は見当たらない。得難い一本。