踊る猫

自転車泥棒の踊る猫のレビュー・感想・評価

自転車泥棒(1948年製作の映画)
3.8
第二次世界大戦直後の混迷を極めたローマで起こる悲劇。主人公の自転車が盗まれてしまい仕事が出来なくなるというものなのだが、この映画はその進行の過程で「誰が自転車を盗んだか」という点に的を絞られていない印象を感じさせる。一応自転車泥棒らしき人間は見つかるのだが決定的な手掛かりは得られず、罵声を浴びせられて追い返される始末である。「誰が自転車を盗んだか」というミステリ仕立ての映画として成立しているのではなく、「荒れ果てた状況そのものが悪なのだ」ということを告発しようとしているように私には映る。アキ・カウリスマキやケン・ローチがこの映画を高く評価する理由が分かるように思った。ふたりともそれぞれのやり方で自分なりの『自転車泥棒』を撮り続けているのではないのか、と。
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