主人公リッチは妻と息子の3人家族。
2年の極貧生活ののち、ようやく手に入れた仕事には自転車が必要だった。
ありったけのシーツを質に入れ、自転車を手に入れるが、無情にも自転車泥棒に遭ってしまう。
第二次世界大戦敗戦後のイタリアを舞台に、ある市民にスポットを当て彼の姿を生々しくかつリアルに描いた不朽の名作。
うーん、切ない。
徹頭徹尾何の救いもない、不景気と貧乏の悲しさがただただストレートに描かれた映画。
家族の生活がかかった自転車を盗まれた父ちゃんが、役所も警察も当てにならず、一人息子を連れて一日中町中を駆けずり回る物語。
名作と言われるのもわかる。
古い映画しか褒めない権威主義&懐古趣味の人は嫌いだけれど、なるほどたしかに本作に限って言えば、この時代の技術、この時代の社会情勢、この時代の語り口でなければ醸し出せなかった、独特な雰囲気がある。
ラストの親子の悲哀が凄い。
あんなスパッと終わられたら身も蓋もないんだけど、だからこそ生じる余韻がある。
想像する未来がある。
平和かつ豊かな時代に生まれ生きてる事に感謝の気持ちが満ち溢れてくる。
世の中の不条理を直球で真正面からぶつけられて、生きる希望が25パーセントくらい失われました。
ずっとやるせない怒りに包まれながらの鑑賞していたので、頭痛がします。
これが当時の現実なんだろうけど、つらすぎました。
お父さん役も子役も素人だというから驚き。
素晴らしい演技だったと思います。
観た後で資料本でお勉強。
この映画はいわゆる「ネオリアリスモ」映画の代表作とされているそうな。
同様の映画としてロッセリーニの『無防備都市』を観ているが、敢えてプロの俳優を使わないなど、虚構性を極力排したような作りと雰囲気には共通点があるし、社会の抱える問題を直截に正視する、という点でもよく似ている。
つまり「ネオリアリスモ」というのはこういうことなんだな、という理解は得られた。
ただ、『無防備都市』はそういう社会に対する「怒り」が物語に一本軸を通していて、より政治的ではあるが、その分観る方にも「怒りを燃やす」という形で、ある種の救いが感じられた。
こちらは政治性は薄いが、それ故にこの悲しみをどこに持っていけばいいのか分からなくなって、そのやるせなさがたまらない。
そういう意味でキツい映画だった。