ちろる

アメリカの影のちろるのレビュー・感想・評価

アメリカの影(1959年製作の映画)
3.9
これは、美しい娘と若い男子の恋の物語ではない。
アメリカの光りと影にはとんだ落とし穴が存在する。

多くの映像作家に影響力を与えてきたカサヴェテスだが、この作品はそのいくつか見た中でも「らしさ」がシンプルに伝わってくる作品だ。
ジャジーでドキュメンタリータッチの映像に酔いしれ、そこをカッコいいとかおしゃれだと思っている暇はない。
描くのは「混血」故にいく先を見失なう3人の兄妹の物語なのだ。
この物語において非常に重要なのは黒か白か中間なのかという点で、そこにおいては作品がモノクロ故に肌の色が強調されている。

アメリカだけがなぜこのように過度な差別が浮遊しているのか分からないし、人によって態度は異なるのだろうけれど、ここに描かれる白人の青年において描かれたのは「葛藤」と「恐れ」であった。
これは無知な私でもなんとなくリアリティがあると感じた。
「罪悪感」を感じながらも隠しきれない動揺がレリアを傷つけ、絶望へ導く。
徹底的に黒人がやり込められてしまう差別作品とは異なり、人として不器用な表現力が互いを修復不能な関係に追いやってしまう。
この後半のやり取りの演出が地味だけどとても印象的。
これはなかなかセンスがないと、できないし人間を良く知らないと描けない。
ジム ジャームッシュはカサヴェテスをリスペクトしてるとよく言われているが、このカテゴリーの監督がなかなか出てこないのは理解できる。
賭けだし、よほどの才能ないと無理だもの。

アメリカの光りと影は決して拭えない。
影が消え去るのはまだまだ先のことなのだろう。
ちろる

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