カタパルトスープレックス

アメリカの影のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

アメリカの影(1959年製作の映画)
3.8
アメリカのインディー映画の父、ジョン・カサヴェテスによるめっちゃカッコいい最初の作品です。出だしはオッケー!家族と友人、そしてラジオでの声かけ(今でいうクラウドファンディング)で資金調達をして作られた自主制作映画です。カサヴェテスがいなければジム・ジャームッシュだけでなくアメリカのインディー映画は随分違うものになっていたでしょうね。

まず、最初のライブシーン。(たぶん)『監獄ロック』に躍り狂う人々の間をくぐりながら進む主人公。くわえタバコにサングラス。ボロボロのジャケット。どことなくザ・ジャム時代のポール・ウェラーっぽいけど実は黒人。このオープニングでガツンとやられます。とにかく音楽がいいです。全編に流れるジャズ。もともとはチャールズ・ミンガスの演奏が使われていたそうなのですが、のちのバージョンではそれは削除されて、シャフィ・ハディの演奏に置き換わってしまったらしいです。ボクが観たのは後のバージョンでしょう。

内容的には黒人の四兄妹を中心とした群像劇です。もともとはカサヴェテスが教鞭をとっていたワークショップの延長線上として作られていたもので、シナリオのない即興演技を集めたものとなっています。習作的な位置づけですので、カサヴェテスの特徴ともいえる感情描写はまだ表面化していません。「まあ、若干あるかなあ」程度です。

最初がインパクトがありすぎて、途中から中だるみします。緊張感が持続しないんですよね。人種問題を絡めたのは蛇足かな。でも、ゲリラ的に撮影したでしょうから、ニューヨークっぽいヒリヒリした感じがダイレクトに伝わってきます。