140字プロレス鶴見辰吾ジラ

監獄島の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

監獄島(2007年製作の映画)
3.0
”ストーンコールドとザ・ロックはどこで差がついたのか?”

主演は世界最大のプロレス団体
WWEのカリスマレスラー
”ストーンコールド”スティーヴ・オースチン
を主演に迎え
死刑囚が無人島に集められ
最後の1人になるまで殺し合いを行い
生き残った者が自由を手に入れられるという
”デスゲーム”をネット配信で世界に中継され
見世物となり闘う姿を描くアクション映画。

明らかに設定と思想に対して予算が足りていないことと、製作スタッフの総合力が追い付いていない。映画自体はきちんとアクションをこなして、殺人ゲーム中継という反倫理的な見世物に対してのとらえ方を促そうとする方向性は描けているものの、アクション映画としての土俵の外には出られず、映画自体が監獄の中のような閉鎖的感情のアクションスリラーでとどまっている。

上記に書いた”ザ・ロック”ことドゥエイン・ジョンソンのエンターテイメント力で言えばWWEでは勝っていたであろうスティーヴ・オースチンが映画スターとして大成できなかったことを物語っている。恐らくザ・ロックを主演に回して、2019年の現代で映画を製作できたならば、巨額の資金を投じてアクション映画だけという閉鎖感は打ち破れただろう。

再度言うが、作品自体は楽しかったし、作品の格としては及第点は取れている。しかしながら本作公開当時のネット配信番組の力やネット番組での倫理観を考えて思うと、もっとデスゲームを弱肉強食にせずにアイテム投入を惜しげもなく行い、中継を見て熱狂している観客の視点をダイナミズムをもって提供できたと思う。このデスゲームに横やりを入れようとする捜査官の映像や視聴者コメントからの情報から島を特定する努力を映したり、底辺が集まるBARで誰が勝つかの口論でカオスが拡大する様は抑制されていた。もっとゲーム的に登場キャラクターのキャラクター性を「クリード チャンプを継ぐ者」においてのキャラクター登場の右上にステータスデータが出るみたいな演出が欲しかった(何人殺して、何の罪を犯したとか)。単純にボディカウントをしてくれないので、誰がどこでいつリタイヤしたかが明確でなく、クライマックスに向かうにつれてそのクライマックス性が持つスリルが提供できておらず、今回ヴィラン役となるヴィニー・ジョーンズも悪としてのインパクトが発揮しきれずファイナルバトルのエクスタシーが感じられず、それならば島の外に通信を隠れてとるのようなサスペンスが欲しかった。

最後の最後はそうなるだろうという展開だったが、決着のつけ方においてのダイナミズムの減衰が著しく、劇中の黒人女性の立ち回りの方が面白かったし、明らかに距離感のおかしいフィニッシュに苦笑するしかなかったわけだ。

スティーヴ・オースチンの映画スターとしての格として、ザ・ロックのような映画スター性において差をつけられ、映画自体の閉鎖性をもたらせてしまったことをWWEでスタナーをぶっ放しひたすら気持ちをアゲてくれたあの頃を思うと切なく思ってしまう。