シズヲ

デッドマンのシズヲのレビュー・感想・評価

デッドマン(1995年製作の映画)
4.8
美しい程の虚無で彩られた西部劇。活劇でもなければ残酷趣味でもなく、徹底したモノトーンの作風で描き切ったウエスタンは凄い。凍えるような静寂が作中に延々と漂い、それは次第に死臭へと変貌していく。現実感を失いそうな雰囲気ですらあるのに、時折見せる滑稽さも相俟って奇妙な生々しさに溢れている。ただただ麗しく、儚く、そして詩情的な死への旅路だ。ニール・ヤングの退廃的で哀愁溢れるサウンドが独創的なムードを補強してくれる。

全編に渡ってモノクロの映像なのが実に印象的。「死人」の詩で始まり、地獄と称される町に辿り着く冒頭から既に異様な空気に溢れている。その後始まる旅の情緒も凄まじい。一つ一つの情景がとんでもなく美しいんだよな。深い林を渡る場面、主人公が小鹿の屍に寄り添う場面、陸地の破滅的な光景をよそにカヌーで川を渡る場面……叙情的なまでのカットが幾度となく繰り返される。それらの描写と共に刷り込まれる「死」のイメージに何故だか心地良さすら感じてしまう。

そんな感じで実に不思議な映画だった。真っ当にストーリーを咀嚼するというよりは、芸術めいて何かを感じ取るような作品。奇妙だけど、かなり好き。まだ若かりし頃のジョニー・デップの出で立ちも中々かっこいい。
シズヲ

シズヲ