ほーりー

火垂るの墓のほーりーのレビュー・感想・評価

火垂るの墓(1988年製作の映画)
4.4
高畑監督の訃報からすぐにコナンの最新作と差し替えて、ノーカットで本作を追悼放映したのは日本テレビの英断だと思う。

誰もが名作と認める映画だが、この映画が大好きという方に未だお目にかかったことがない。
「いい映画なんだけど、観るのがつらいんだよね……」

自分も終盤の「埴生の宿」のレコードが流れる場面になると、いつもオイオイ泣いてしまう。
この幼い兄妹に待ち受ける運命がわかっていながらも、成す術もなく誰も彼らを助けることができないという事実に、自然と目を背けてしまうのだと思う。

時々挿入される、清太と節子が過去の自分たちを眺めているシーン。観ている我々もそうだが、当の本人たちもあの時この二人に何かやれることは無かったのだろうかという悔しさみたいものがこみ上げてくる。

昨日改めて本作を鑑賞し、高畑監督自身が生前コメントしている通り、これは単なる反戦映画ではないと感じた。

過酷な運命に抗うだけの力や方法を持たない弱者の悲劇を、冷徹に、そして慈しみ深く描いた名作である。

子供の頃にこの映画に触発されて、サクマドロップの空き缶に水を飲んでみたけど、本作の節子ちゃんみたいに美味しいとは思わなかった。そんな小さなことでも幸福と感じた時代だったんだなぁと思うと胸が痛む。

■映画DATA==========================
監督:高畑勲
脚本:高畑勲
製作:原徹
音楽:間宮芳生
公開:1988年4月16日(日)
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