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スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師のtakのレビュー・感想・評価

3.3
 ティム・バートン監督の前作「チャーリーとチョコレート工場」が公開されたとき、その前の「ビッグフィッシュ」と違ったハチャメチャな楽しさが嬉しかったのを覚えている。僕も「待ってました」と思ったもんだ。ティム・バートンの世界観には、世の中から忘れられたものや異形なるものへの偏愛がつきものだった。前2作にもそうした要素は見られたが、家族愛とファンタジー映画では、やはりなし得ないドロドロした部分がある。「スウィーニー・トッド」はミュージカルとして多くの人に知られる題材であり、しかも血なまぐさい復讐の物語。B級映画で育ったティム・バートンのダークサイドが現れたものかもしれない。

 確かに興味深いし、因縁めいた物語も面白かった。でも僕は、主人公が殺人鬼になることに必然性を感じられないまま、やや悶々としてスクリーンに飛び散る血しぶきを見ていた。確かにいろんなひどい目に遭って人格が破綻したのかもしれないけれど、判事への復讐で事は足りるはずなのだ、本当は。だから過去を知るイタリア男を殺したときに、彼の禁断の炎に火がついたってことなのか。狂気を演じさせたら誰よりも納得させられる演技ができるはずのデップなのに、これは何故かそう思えなかった。一方、仇役をやらせたら天下一品のアラン・リックマン。「ダイ・ハード」以来、僕はお気に入りの俳優だ。この映画でもその魅力は十分に発揮されている。
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