滝和也

SPL/狼よ静かに死ねの滝和也のレビュー・感想・評価

SPL/狼よ静かに死ね(2005年製作の映画)
3.9
香港黒社会
VS重犯罪捜査官

闇に塗れし光は
その輝きを漆黒となし
血で血を洗う闘いに
堕ちていく…。

サモハンvsドニー師父!

「SPL/ 狼よ静かに死ね」

ずっと見たかったドニー・イェン主演のバイオレンス・オペラ。香港ノワールとクンフー、格闘アクションの高次元な融合を魅せた正にファイティングオペラと呼べる傑作。監督はウィルソン・イップがドニー・イェンと初タッグ。イップマンはこの後の作品です。

香港警察重犯罪捜査課は黒社会の首魁ポー(サモハン)を追っていた。だが犯罪の証人は殺し屋(ウージン)に殺され、チームリーダー、チャン(サイモン・ヤム)も怪我を追う。チャンは証人の幼い娘を引き取り、復讐に燃え、チームと共に暴走。3年が過ぎ、抗争が続くも、引退の日を迎えた。後任であるマー(ドニー・イェン)が来たその日、最悪の事件が起こる…。

香港ノワールのダークなテイスト、圧倒的なバイオレンスシーン、そしてレジェンドサモハン、ウージン、ドニー・イェン師父(アクション監督兼務)の凄まじいクンフーアクション。それらが見事に融合し、僅か1時間半の短尺ながら濃密な内容の作品に仕上がってます。

ストーリーは悪を倒すため、自らも悪に落ちる捜査官、そこに新たに加わったドニー師父と彼らが報いを受けながらも…と言うシンプルなものではあるのですが、各キャラクターの背景が巧みに書き込まれ、キャラが立っており、ストーリーに厚み(哀しみ)を加えています。

特にレジェンドであるサモハン演じるポーに関しては敵ながら、キャラが足されており、初の悪役として迎えられた重鎮らしい役柄でしたね。これがまぁ…ラストに生きてくる。このラストはモヤ感あれども…納得が行きましたし、特徴的であり、作品を高めてます。

前半はバイオレンスノワール、後半はバイオレンスアクションと盛り上がりを見せますが、やはりウージン演じる殺し屋が白眉。彼だけキャラが描かれず得体のしれない強さが逆に浮き出ている。

故にドニー師父との対決は正に激闘。ドスとクンフーを融合した殺し屋に警棒と己の肉体を武器とし、立ち向かうドニー師父演じるマー。その得物捌きはあまりに速すぎて目で追えないレベル。全盛期のドニー師父はやはり凄すぎる…。このシーンはカリ(東南アジアの格闘術)の刀術を参考に演じられてるそうです。

また重鎮サモハンも全盛期さながらのアクションをドニー師父と展開。肉の壁にドニー師父の飛燕三段蹴りが炸裂、タフネスを誇るサモハンとの対決は見応えがあります。サモハンもデスバレーボムを食らわすし…。バーリトゥード的な要素も組み込まれ、マウントパンチや柔術的な関節、締めまで多彩かつリアルな闘いで凄まじかったです…。

そうせざる得ない、行き場のない哀しみを秘め、堕ちていく捜査官と黒社会(マフィア)と言う絶対悪でありながらも身内に光を求める首魁。人の業(カルマ)を背負う人々を巧みに描き、圧倒的なアクションでエンターテイメント性を打ち出した見応えある作品。これはオススメです!
滝和也

滝和也