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映画館の恋のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

映画館の恋(2005年製作の映画)
3.5
【ホン・サンスはクズだが愛おしい】
※2018年最後の映画且つ、filmarksレビューです。来年もよろしくお願いします。

ホン・サンス映画は、大分日本でも認知度およびファンが増えてきて、劇場公開DVD化されるようになったが、それでも鑑賞困難作は幾つかある。その中の一つ『映画館の恋』が先日海外でブルーレイ化されたので取り寄せてみました。製作に日本の(株)ハピネットが関わっているにも関わらず、日本では一切DVD化の話もなければリバイバル上映の話もきかない。ひょっとして残念な作品なのだろうか?実際に観てみた。

ホン・サンスならではの、少し時間軸がズレた世界で起こる愛の可笑しさを描いた喜劇でした。ホン・サンスにしては軽妙な音楽で物語は始まる。楽器屋から兄弟が出てきて、友情を確かめ合い別れる。弟は何気なく店を覗き込むと知り合いの女性と出会う。何か運命を感じたのか付き合うことになる。ホン・サンス映画に出てくるゲス男と比べると幾分かマシなように見えるが、案の定ゲスな展開となってくる。女を置いてタクシーに乗り始め、「これは俺の本心だ仕方がない」と言い訳をする。女の乳房を片手でがっしり鷲掴みし、女は「痛いわ!」と叫ぶ。ボロボロになるまで酒を飲む。酷すぎる様が描かれる。酷いのだけれども、カメラワークと音楽がお茶目で、なんだか愛おしくなってしまう。キム・ミニが出ていない時代でも結局は男はクズで、女はそれに巻き込まれるのだ。

そしてホン・サンスはお得意の反復で同じことをする。後半は、映画監督として失敗した男が、はたまた店を覗き込み、同じ女と恋愛関係になるのだ。前半パートで展開されたフラグメントが再構築されていて、円環構造を形成していくのが面白い。原題は『극장전(劇場前)』となっており、演劇の外側で展開されている物語、映画の外側で展開されている物語というのが肝となっているので英題及び日本題は本作の意図を理解できていないような気がする。余計な先入観を与えてしまう気がするのですが、安定のホン・サンス映画でした。日本でリバイバル上映しないかなー
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