ちい

鍵泥棒のメソッドのちいのネタバレレビュー・内容・結末

鍵泥棒のメソッド(2012年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

突然の結婚宣言をした雑誌の編集長・香苗。
一仕事を終えた伝説のヒットマン・コンドウ。
自殺に失敗した売れない役者・桜井。
三人の人生が、銭湯でコンドウが転倒し、記憶喪失になったことをきっかけに交錯してゆくお話。

内田けんじ監督らしい、予測のつかない展開が面白い。手に汗握る感じとは違う、何とも言えない裏切り方が良い。最後に全てにオチがつくところも好きだ。

記憶を無くしてもコンドウの生真面目な生き方は消えない。突然底無しの貧乏暮らしに身を落とすことになるのだが、持ち前の几帳面さでてきぱきと身辺が片付いてゆく。かたや、高級マンションに忍び込んだ桜井は、部屋の豪華さにも関わらず、貧乏時代と同じカップ麺を食べ、部屋をぐちゃぐちゃにしてしまう。性分、というやつなのだろうか。二人とも、何となくそうしてしまっているところが面白い。

本作のタイトルにもなっている、メソッド。桜井の職業が役者なことから、演劇にまつわる意味で台詞でも触れられていたが、コンドウ自身も学びのメソッドを確立しているように思えた。便利屋も、ヒットマン稼業も、自ら学び道を切り開いてきた。記憶喪失の間は、桜井として演劇理論まで学びとろうとしていた。コンドウはノートを丁寧にまとめていたが、自分なりのやり方を確立している人はどんなことに取り組んだとしても強いんだなと思った。

ヒロインの香苗も、丁寧にノートを作っていくタイプ。セリフで語るのではなく、観客自身に、君たちお似合いなんじゃない、と思わせるところが良い。

暮れに久しぶりに観て、来年の手帳は気合いを入れて書いてみようと思いました。
ちい

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