本作の韓国リメイクに当たる「LUCK-KEY」が最高に面白かったので、原作であるこっちも久々に再鑑賞。最初に答えを言ってしまうと、日本と韓国の映画表現の違いが表れるという点で、これほど典型的な例は他に無いかもしれないと思う。
初鑑賞時のレビューで書いた通り、やはりこの日本版は前半のテンポが悪い。殺し屋と無名俳優という全く立場の違う2人が、記憶喪失をきっかけに入れ替わるという、コメディ映画の王道的なプロットを持ちながら、それを分かり易く提示せず、観客に行間を読ませる形で、少しずつ状況を説明していくのだが、この辺りの構成は登場人物のリアクションだけで小気味良く展開していく韓国版とは対照的だ。
全体として、入れ替わる事の面白みよりも、そこから2人が自分の人生を見つめ直すヒューマン・ドラマ要素に重点が置かれているのも特徴だろう。ヒロインの家庭の事情で軽く泣かせようとするのも日本映画らしい。
総じて言えるのは、日本版は「運命じゃない人」で高い評価を得た内田けんじ監督の作品である事を前提にして、観客の洞察力やファン心理にある程度依存した作りになっている事。対する韓国版は、深みこそないものの、前知識がない人を巻き込んでいく分かり易さとパワフルな演技が見所だ。一部のメジャー作を除くと映画はあくまでマニアの趣味になっている日本と、広く国民の娯楽として浸透している韓国。両国に於ける映画に対する認識の違いがそのまま作風に表れているのではないだろうか。
本作で初めてW主演となった香川照之と堺雅人が、この翌年に「半沢直樹」で再び共演し大ヒットとなる。本作に対する批評ではないが、同じ俳優に似たテイストの役や組み合わせを何度も充てる手法も日本のお家芸だ。