こたつむり

バチ当たり修道院の最期のこたつむりのレビュー・感想・評価

バチ当たり修道院の最期(1983年製作の映画)
2.8
★ 宗教の限界を試す思考実験

逃げてきた元歌手が修道院を変える物語。
って「どこのウーピーさんが主演ですか?」と思わず訊きたくなりますが、実のところ、本作の方が先駆け(1983年製作)。ただ、鑑賞後に「ほっこり」なんて言えないくらいに不謹慎な作品ですけどね。

何しろ“あの”アルモドバル監督の出世作。
ぶっ飛んだ発想が炸裂しているのです。
尼僧たちは邦題どおりにバチ当たりで、LSDやヘロインを摂取したり、官能小説に耽ったり、神父様と愛を交わしたりと、やりたい放題。

そもそも彼女たちの名前からして。
墜落尼とか、どふねずみ尼とか、肥溜尼とか。
通常ならば“厭うもの”を敢えて名前に付ける発想。いやはや、キリスト教が主流の国でこの内容は…かなり攻めています。やはり、アルモドバル監督は、退かぬ、媚びぬ、省みぬ。凡人では選べない茨の道を貫くのですね。

しかし、監督さんがスゴイのは、異端を極めながらも作品の根底で“愛”を描くこと。しかも、それは“しっとり”としていて“しなやか”。男性上位の発想では描けない極致。いやぁ。デビュー間もない頃から現在に至るまで、芯がブレていないのは見事です。

まあ、そんなわけで。
攻めて攻めて攻めて攻めて。
やめてやめてやめてやめて。
と歌いたくなるほどに攻めている作品なのですが、隠された“愛”を紐解きながらの鑑賞をオススメします。

…というか、正直なところ。
少々退屈な作品なのです。何しろ、攻めているのは人物設定だけ。キリスト教が生活に密着している環境ならばいざ知らず、現代の日本人の観点では淡々とした印象の方が勝ってしまうのです。

あ。でも、強烈な印象の場面がありました。
それはトラと女優さんとの絡み。

本筋とはあまり関係が無いのですが、CGに頼らずに実物のトラと触れ合っているのです。かなり人間に慣れているようですが、優しく撫でても血飛沫が飛び散るかもしれない…!なんてドキドキの瞬間が続くのです。

でも、冷静に考えれば、そんな状況になったら映画として成りたちませんけどね。いやぁ。ムツゴロウさんって実はスゴイ人なのかも。
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