これは邦題が巧い。確かに出てくるのは不道徳な堕天使だらけ。駆け込み寺的修道院はセックス&ドラッグ&歌謡ショーのパーティ、そして虎!本物!「虎に噛まれるのは虎を尊敬しないからだ」とどこかで聞いた言葉のとおり、尼長はじめ修道女たちは正に猛獣使い(内なる猛獣を飼ってもいる)。シュールでトボけた可笑しみと同時に物哀しさもある。塀の中は外に居場所のない弱き者たちが寄り添い合う慈愛に満ちた(はずの)拠り所なのだ。だがやがて楽園の扉は閉ざされ、尼僧たちもミューズもバラバラに去りゆくのみ。最後はやっぱりメロドラマティックなエレジー。アルモドバル映画のギラギラした原色装飾がカトリックの祭壇にピッタリな過剰さ。細長い窓枠の中を覗き見るショットはステンドグラスの宗教画みたいだった。