SatoEmiko

回転のSatoEmikoのレビュー・感想・評価

回転(1961年製作の映画)
5.0
親を亡くした幼い兄妹の家庭教師となった主人公ギデンス。兄妹の叔父から全権を一任されたのは、子供たちの生活と広大な敷地をもつ大豪邸。天使のような子どもたちと過ごす豪邸での夢のような生活に、汚らわしく忌まわしい"存在"が忍び寄る。その"存在"から穢れなき子どもたちを守るべく躍起になる主人公なのだが…

原作の"Turn of the screw"を読んで数年後、ようやく観れた『妖精たちの森』(この作品の前日談にあたる)。そこからまた数年…やっと観れた『回転』。待ちわびた甲斐がありました!
白黒の画面を彩る不穏でどことなく淫らな空気に、背筋が冷える。
"存在"の描き方も不気味で、幽霊を見たこともない私でも、あの湖に佇む女の"存在"には本気で鳥肌が立ってしまった。

この映画、何よりも恐ろしいのは、子どもたち。
原題"The innocents"の指すであろう天使のような子どもたちの時折漏らす、意味ありげな表情と言葉が、言い知れない薄気味悪さと嫌悪感を誘う。
"おそるべき子どもたち"の映画は色々あるけれど、ここまで幼い子ども(しかも、めちゃくちゃ可愛い)に対して「恐ろしい」と感じた映画は私の中では他にない。
また、彼らを守ろうとする主人公も、その必死さ故の狂気が恐ろしい。牧師の娘としておそらく真面目に生きてきたであろう彼女が、汚らわしい過去の秘密にどんどんのめり込んでいく必死の形相には正直ドン引き状態。

汚らわしい"存在"は幽霊なのか、主人公の抑圧された欲求とプレッシャーの生み出した妄想なのか….真にinnocentであるのは誰なのか…結局何も明かされないまま迎える悲劇には絶句。

一点の曇りもない表面の美しさと、その内側に湛えられた真っ黒で冷たくよどんだ穢れのギャップに胸やけを起こしそうな映画。ホラーの傑作だと思います。
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