怨念大納言

回転の怨念大納言のレビュー・感想・評価

回転(1961年製作の映画)
3.5
非常に渋いホラーの古典。
この映画の幽霊は、驚かせる為に「出る」のではなく、超常現象としてそこに「在る」といった感じ。湖の上や窓ガラスに映りこんで、じっとこちらを見ているだけ。

音や光で驚かせるタイプのホラーは肯定派の私ですが(見る側の私にとって怖ければ手段なんて関係ないので)、わざわざ人間を脅かしに来る幽霊というのは、映画の都合で作られた商業的存在である事が前面に出てしまう事は否めない。
対して、この映画の幽霊は本当に不気味で迫力がある。

幽霊が地味な分は、デボラ・カーの演技力でカバー。
あの怖がり方だとか、後半に向けての豹変だとか、シャイニングのジャック・ニコルソンに匹敵するのではなかろうか。

ラストは、リドルストーリーと取っていいんだろうか?
リドルストーリーにも好き嫌いがあって、例えば乱歩の一枚の切符は好き。
オチをこちらに想像させるというのは、ゴールの直前で突き飛ばされたような拒絶を感じるのは確かでそれまでの話の構築だとか雰囲気が上手くないと、「はっきりしろや!」となるのではないかと。

この映画のラストに関しては、私は好きです。デボラ・カーの狂いっぷりを人間の狂気と捉えて恐れるのも、悪霊でないと説明がつかないと捉えて恐れるのもいいので、二度美味しいんじゃないでしょうか。
怨念大納言

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