タマル

鉄男 TETSUOのタマルのレビュー・感想・評価

鉄男 TETSUO(1989年製作の映画)
4.2
さぁ、みんな!
家から飛び出して 自立した本当のパンクスになろう!!

以下、レビュー。


田口トモロヲ氏。

彼が紹介される時、枕言葉の如く真っ先に言われるのが「あのプロジェクトXのナレーションでお馴染みの」であった。
しかし、プロジェクトXが放送されていたのは00〜05年。私はまだ小学生か中学生ぐらいの期間であり当然見てはいない。 従って私にとっての田口トモロヲとは、名脇役俳優ではなく、サウスパークでのギャリソン先生のような毒舌の似合うナイスゲイの声優や、「ウンコ 食べたら 40万円」 と歌って、思春期真っ盛りの私を熱狂させた、あのパンクバンド「ばちかぶり」の一ボーカルのようなとにかくクセの強いおっさんだった。さればこそ、現2017年、俳優田口トモロヲがなんか良さげなおじさんとして映画・ドラマに出る度に、勝手な話だと自覚しながらも「なんだかなぁ」となにか割り切れない感情も湧き上がってくるのである。

さて、本作『鉄男』が発表された1989年といえば、「ばちかぶり」が『音楽芸者』を出し、メジャーデビューを果たす一年前である。
当時はインディーズブームも終息しつつあり、レコード会社を批判の対象としていたバンド達がメジャーデビューを選ばざるを得なくなっていった時代へと移行していったそうだ。田口は当時の自分を振り返り

「(前略)今まで否定してきた社会に対し、完全に負けを認め、そこに入って行こうと思った。
一方、敗北感と自分を許せない気持ちがこの頃あった。」

と述べている。
そういった怒りや寂寞とした虚しさを『鉄男』の「男」から見出すことはそう難しくない。塚本晋也扮する「やつ」との合体後のあの表情は、まさにそれら全ての感情を内包したベストアクトであった。これで俳優に転換したなら私は!私は満足だ! いや、むしろメガネのトモロヲはいい!!とか超勝手なことを思ったりした。

ところで、『鉄男』という映画は海外でも知名度が高く、私も名前ぐらいは知っていたのだが、そんな素晴らしい映画になぜ田口トモロヲ?(ど失礼) とか思っていたのだが、内容を見てこれ以上ないというほど納得した。

この映画がサイッコーにパンクだったからだ。

自分のコードを押し付け、他人の醸成したコードを破壊し尽くすことがパンクだとするならば、この映画のパンクっぷりを清々しいものがある。決してロジカルな内容ではないので、先入観を持たれないためにここで内容を紹介することは控えるが、とにかく勝手に、好きなことをぶち込んでいる。自分のコードを表現するためなら、内容を誤読されることも厭わない姿勢である。そして、私はそういう映画が物凄く好きだ。トモロヲがパンクな映画に出ている、ということで私のテンションはぶち上がり、まさに天にも登るような幸せな時間を味あわせてもらった。

まぁ後半はある程度わかりやすい内容に回収されていくため、怒りのあまりディスプレイに中指を立てることとなってしまったのだが(笑)


海外で評価されるのも納得のフェティシズム!!
オススメです!!!!!!
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