私はこのことをしばしば言ってきたんだが、およそ人間の不幸というものは、ひとつのことに由来している。それはなにかというと、人間が自分の部屋でゆっくりとくつろいで、じっとしてなどいられないということ、このことである。生活していくための財産をもう充分に持っているような、そういうある人間がいたとして、もしもそいつが自宅で何の不都合もなく、楽しくじっとしていられるのだとしたら、彼は航海にも出なかっただろうし、要塞攻略にも行かなかっただろうに(反実仮想:実際にはこいつは行っちまいやがった)。我々は高いカネを出して、軍隊の役職を買ったりするわけだが、その理由はひとえに、自分の街から動かずにいるってのがマジで耐え難いからである。我々は人々との交際や賭け事の慰戯を捜し求めるんだが、ひとえにその理由は、自宅でじっとしていることが、楽しいどころではねぇからだ。
ブレーズ・パスカル『パンセ』(136-139)
j’ai dit souvent que tout le malheur des hommes vient d’une seule chose, qui est de ne savoir pas demeurer en repos dans une chambre. Un homme qui a assez de bien pour vivre, s’il savait demeurer chez soi avec plaisir, n’en sortirait pas pour aller sur la mer ou au siège d’une place. On n’achète une charge à l’armée si cher, que parce qu’on trouverait insupportable de ne bouger de la ville. Et on ne recherche les conversations et les divertissements des jeux que parce qu’on ne peut demeurer chez soi avec plaisir. Etc.
-Blaise Pascal, Les pensées, Lafuma 136, Brunschwicg 139.
