晴れない空の降らない雨

ファンタスティック Mr.FOXの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

ファンタスティック Mr.FOX(2009年製作の映画)
4.2
 カラフルでポップな画面はお菓子のように幼児的だが、着色料のように人工的でもある。初見では面食らうような極端な横スクロールやPOVでのアクションなども、往年のテレビゲームのようだが、やはり人工的な印象を与えもする。こうした幼児性と人工性のアマルガムは、何よりストップモーション(アニメーション)というジャンルに体現されている。
 テンポの刻み方もスタイリッシュだが、それだけに作為性が前面に出ている。脱力系のシュールな笑いも観客の没入を妨げる。ウェス・アンダーソンの映画にとまどうとすれば、その独特の掴み所のなさが理由だ。それは、社会的現実をそのまま写し撮るタイプの作品とは真逆である。むしろストーリーだけ抜き取れば、それなりにドラマが盛り込まれている。ところが、そのドラマに対して登場人物自身がどこか距離をとっている雰囲気があり、感情移入したくてもできない。
 そうした違和感は映画が死を描くときに突出する。死という出来事に対しても、真正面から向き合おうとしているように見えない。率直にいえば、アンダーソンは誠実になりきれていないのである。「葛藤回避的」といってもよいだろう。全般的な懐古趣味も、そうした回避的傾向を匂わせている。
 しかし、そうした現実逃避的な語り口の傾向、一応はエンタメに寄せているストーリー、そして美術や音楽のポップな浮遊感、そしてパペットによる俳優たちが、絶妙なバランスでひとつのオリジナルな世界を築き上げている。つまるところ、自分が本作を気に入ったのはストップモーションという語り方の選択による。W. アンダーソン自体は、多分どちらかといえば嫌いなほう。