今まで観てきたウェスアンダーソンの世界観はなんというか絵本風で、映画を別の芸術に昇華しているのが素晴らしいと感じていた。
本作は、その世界観そのままに、アニメーションという形で表現している。
色合い、テンポ、画面、世界観がまさにウェスアンダーソンワールド。
突拍子もない展開やシャレの効いた展開など、子供の頃に読んだロアルドダールの本を思い出した。原作未読、でもきっと原作の良さも最大限に活かしてるんだろうなと想像できる。
何度も巻き戻して観直してしまうような細やかな部分に魅力が詰まっている。CG全盛の時代に、あえて全て実写で行うというストイックさが本当にすごい。
動物たちの住む家、その中のデスクや引き出しなど、本当に細やかなところまでアイテムが置いてあり、とにかく目が楽しい。
登場キャラクターたちも、人形でここまで多様で奥深い表情を出せるのか！と驚きの連続だった。
人間とは違い、短く、野生という過酷な世界に生きる彼らの価値観は、人間とぶつかり合うものではありながらも、栄光と自信に満ちた生を全うしようとする姿は心を惹かれるものがある。
そして銀に光る狼を見たとき。真の野生動物、それがちゃんと美しく、誇り高かったからこそ、涙が溢れた。
人間と自然の共存、などといった妙に説教臭いメッセージ性がなく、本当に楽しい映画として大満足の一本だった。
子供向けの雰囲気ながら、"大人ごころ"をくすぐる要素満載です。
