フィルモワ

炎のジプシー・ブラス 地図にない村からのフィルモワのレビュー・感想・評価

4.0
人生の闇鍋

トニー・ガトリフ作品ではおなじみの、ロマ音楽。古くはインドやオスマン帝国から中欧の地に流れついた彼らの音色には、曰く言いがたい情緒があり、この手の音楽が鳴り出すと、胸騒ぎが止まりません。

本作はルーマニアの小さな村から、今や世界中で演奏活動を行う「ファンファーレ・チョカルリア」というバンドを追ったドキュメンタリー。普段は冴えないおっちゃんたちの、まぁなんと格好いいこと!もともとは金物修理などで生計をたてていた民族。使い込まれてぼこぼこの管楽器は、彼らにとっては鍋やかんと同等の生活用具だということを偲ばせます。だから、火にかけられた音楽はこの上なく瑞々しく、躍動している。

哀愁も喧噪もごった煮にしたような、このロマンチックな大騒ぎになんとしても混じりたい!と思ったら、昨年来日していたのですね…。“世界最速のブラス”を捕まえるには、こちらも常々燃えていないといけません。