ハリ

容疑者Xの献身のハリのネタバレレビュー・内容・結末

容疑者Xの献身(2008年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

最愛の女性を助ける為に自らの全てを差し出す物語。

石神の悲壮感の写し出しから花岡親子の殺人まで恐ろしく早いテンポで進んでいく。思わず入り込んでしまい時間を確認すると20分程度。だが、忙しない感じは全くせず展開の広げ方が素晴らしいと感じた。

石神が赤の他人に対して助け船を出す理由は語られてなかったが徐々に確信に迫っていく様は滑らか。間違った方向への恋心がこの殺人を犯したとの見解で進んでいく。

自分がストーカーとして印象付ける為の工作は本編の警察と同じで、観てる私達にもミスリードとして働いていた。数学の持論、ホームレスの描写など至るところに伏線が散りばめられており、ラストで一気に回収される。

石神の恋心のミスリードと真相の伏線が全く正反対に作用していた事が個人的にはいい展開だと感じた。弁当屋で鏡に写った表情と湯川へとの「君は若々しいな」というセリフは歪んだ恋心のミスリードと見せ掛けて、石神の本心が漏れでたシーンであり、同時に湯川が石神を疑うきっかけを持ったシーンで本編の最重要シーン。

自分自身が殺人を犯す事によって、花岡親子を助け、自分自身への枷として胸に打ち付ける。一体どこまでの愛があればここまで行動できるのだろうか?石神は花岡親子を助けたと同時に、自分の人生に潤いを与えてくれた花岡親子に助けられていた。だが、ここの愛情表現が浅いと感じた。「愛する人を守るために自分の全てを捧げる」がテーマだが、このテーマに辿り着くまでのバックボーンが伝わってこなかった。このテーマに沿わすように無理やりラストシーンで親子との交流を容れた感が否めない。

とはいえストーリー、展開共に満足の行く作品。物語が真相に迫る流れは美しく、面白さ尻上がりになっていき、最後の号泣シーンは必見。
個人的評価:名作
ハリ

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