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容疑者Xの献身のEDDIEのレビュー・感想・評価

容疑者Xの献身(2008年製作の映画)
5.0
人生に絶望した天才数学者の最上級の献身。ドラマシリーズとは一線を画す重厚感のある演出の数々。クライマックスは涙なしに観ることはできない。湯川の人間らしい苦悩と友情、石神の絶望感と希望の感情、花岡の苦心と決心、原作を踏襲したミステリーの質の高さと人間ドラマに酔いしれる大傑作。

東野圭吾原作のガリレオシリーズ、福山雅治&柴咲コウ主演で人気に火がついたドラマシリーズ。当初原作には内海薫なる人物はいませんでしたが、柴咲コウが北村一輝演じる草薙の代わりに作品に華を添え、作品の人気を確固たるものにしました。
ドラマシリーズは個人的にはシーズン1の最終話を除き大好きですが、劇場版としてリリースされた本作はドラマ版のポップさは鳴りを潜め、石神という天才数学者にスポットを当てたことで重厚な人間ドラマへと進化しています。
原作とはやや異なる石神のイメージですが、堤真一がくたびれた明るい未来を描けないような中年男性を見事に演じています。堤真一自体は物凄くカッコいいのに、そう感じさせない役の作り込みが素晴らしい。

事件の真相は作中で少しずつ明かされていきますが、天才物理学者である湯川が真相に近づくにつれ苦悩していく模様が作品の質をさらに高めていっています。

湯川、石神、そして松雪泰子演じる花岡靖子という女性の3人が中心となり進むストーリー。彼らの心理戦、花岡の戸惑い、いつでも冷静沈着な石神という構図が常にスリリングさを演出し、作品に熱中させてくれます。

ミステリーの謎もとても見応えはあるんですが、本作では序盤に湯川が嘲笑する“愛”、しかも“本物の愛”というものを見せつけられます。単純に男女が愛し合うという愛も一つの愛の形ですが、これほどまでに純真で胸が苦しくなる愛があるものかと。

柴咲コウはさほど活躍する場面はありませんが、コウちゃんファンとして外せない作品。是非とも原作とセットで楽しんでいただきたい作品です。

当時は原作既読の上で劇場鑑賞しましたが、これほどまでに胸を締め付けられたのも珍しかったと思います。特にその頃は今ほどたくさん映画ばかり観ていたわけではないので。その分衝撃的な実写化作品でした。

※2020年自宅鑑賞204本目
※2008年劇場鑑賞
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