アキラナウェイ

父親たちの星条旗のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

父親たちの星条旗(2006年製作の映画)
3.7
「硫黄島からの手紙」と対をなすクリント・イーストウッド作品。

「硫黄島〜」が2018年2月8日鑑賞。
本作は2019年2月11日鑑賞。
観よう観ようと思っていながら、1年も空いちゃったよ。

1つの戦争を日米双方からの視点で描いてみる事。それは凄くフェアな事だと思うし、そんな事をやってしまうクリント・イーストウッドって、やっぱり凄い。

大平洋戦争最大の戦闘とされる硫黄島の戦いにおいて、アメリカ国民に勝利を強く確信させた1枚の写真。硫黄島に星条旗を立てる6人のアメリカ兵士達。そこに隠された真実とは。生還した英雄の1人、海軍の衛生兵ドク(ライアン・フィリップ)は、何を見たのか。

アメリカ視点である為に「硫黄島〜」とは、国民性の描き方が当然違うものの、セピア色の映像で綴られる物語の肌触りや質感は同じ。

悲惨な硫黄島での戦闘も。

日本側では圧倒的兵力で追い詰められる恐怖を。
アメリカ側では決死の攻撃を仕掛けてくる日本軍の不気味さを。

「硫黄島〜」で手榴弾による自死を選んだ兵士達のその後。腹から内臓が噴き出したその姿を本作で嫌が応にも見せつけられる。

立てられた星条旗は2枚目の旗だった事。
写真に写っていたとされる人物が実はそこにいなかった事。

そんな衝撃的な事実は、勝利を確信し熱狂的に「英雄」達を迎え入れる国民の前で語られる事は許されない。

本来讃えられるべき人は銃弾に倒れたのに、何もしていない自分が「英雄」と持て囃される事の罪悪感。

「英雄」とは何なのか?

国債を買わせる為のマスコットキャラと成り果てた、ごく普通の兵士達。その苦悩と葛藤が如何に胸を掻き毟るものだったのかを、クリント・イーストウッドらしく丁寧に描いている。

どこぞの球場で硫黄島のレプリカを作って、3人の帰還兵達に旗を立てる様子を再現させるなんて。そりゃフラッシュバックに苛まれるだろう。何て酷い事を。

全国民に公表された1枚の写真
届けられなかった多数の手紙

2つの国が多くの犠牲を払って得たものは何だったんだろう。

モチーフとなるものが、写真や手紙といったごくごく小さなものであり、そこからこの2つの作品を仕上げてしまう監督の手腕にただただ圧倒される。

トム・ホランド出てる!?と思ったらジェイミー・ベルだった件。似過ぎです。

おまけにポール・ウォーカーも出てる〜!
と思っていたけど、あっという間に戦死。

戦争で散っていく命の何と儚い事か。