LalaーMukuーMerry

父親たちの星条旗のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

父親たちの星条旗(2006年製作の映画)
4.4
日本のほぼ最南端の領土、硫黄島。第二次大戦の終盤、当時アメリカ軍は、マリアナ諸島の基地(サイパン)から出発して日本本土を空襲して帰還するのは燃料的にギリギリで(片道約2300km)、途中に補給基地が是非とも欲しかった。硫黄島は、神のいたずらかと思えるほど、東京とサイパンを結ぶ直線のちょうど半分の位置にある。火山島なのに全島がほぼ平たんで日本海軍はここに飛行場をつくっていた。だから米軍はここを奪って戦況を一気に前に進めようとした。
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島の最南端にある火山、摺鉢山(170m)をめぐって激戦となった。
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米軍上陸、戦闘開始から4日後の2/23、海兵隊の部隊が摺鉢山をついに奪いその頂に星条旗を立てた。このとき撮られた6人の兵士の写真はあらゆる新聞雑誌に取り上げられ全米で非常に有名になった。そして国民を鼓舞し戦争を継続させる大きな流れをつくった。AP通信のカメラマン、ローゼンタールは、これでピュリッツァー賞をとっている。 6人のうち生き残った3人は英雄として熱狂的に迎えられたのだが、この作品はアメリカ人でもほとんど誰も知らなかったこの写真にまつわる兵士たちの物語。
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原作は3人の一人ドクの息子、ジェイムス・ブラッドリーの ”Flags of our fathers” 生前、硫黄島のことについて何も語らなかった父親の遺品の中に見つけた、硫黄島から家族宛てに書かれた手紙。とてもポジティブな内容に、生前の様子とのギャップにおやっと思ったのが始まりで、6人とその家族に会いに行き、あまりにも意外な真実を知って書き上げたのがこの原作。
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6人の中に入っていたはずなのに誤って別の人の名が載ったこと。当局は間違いに気づいても伏せたままにしたこと。兵士やその家族達の尊い思いを踏みにじるようにして、プロパガンダに利用するアメリカ政府のやり方はまともな気がしない。残された家族に真実を伝えようとしたインディアン出身の兵士アイラ・ヘイズ。PTSDに苦しんだ彼はそのことで心の重しが少しは除かれたことだろう。死んだ戦友の事を残された家族に伝えに行った兵士は日本でも数多くいた。兵士の思いはどこの国も同じなのだ。
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人の命は地球よりも重いと言う。その重い命を両軍合わせて約2万7000も奪った戦闘にどんな正当性があるのだろう。

「本当のヒーローは島で戦って死んだ仲間たちだ」

生き残った兵士の言葉こそ、映画が伝えたかったこと、観客にわかってほしいことだと思う。
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問題があったとはいえ、アメリカは祖国のために戦って死んだ者を丁重に扱っている。それに比べて日本は・・・
(そう思う理由を「硫黄島からの手紙」の方にちょっと書きました)