垂直落下式サミング

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセスの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

2.0
クレヨンしんちゃん映画は、どれも高水準で「つまらない作品」が殆ど存在しない。映画としてダメでも、テレビアニメのファンなら何かしら見所はある。その中での数少ない例外がこれだ。
ひまわりが宇宙人に拐われてしまうおハナシなのに、野原一家がそれほど切迫していない。悪役が本性を現して物語が大きく動くのかと思ったら、しんちゃんは罪悪感がずっと喉の奥の方に引っ掛かってるし、両親がもっと必死こいて頑張るのかと思ったら、それもけっこう簡単に問題が解決していく。そんで、あちらさんにも事情があったから、責めるに責めれない。とかく元気がなくて盛り上がりに欠ける。
契約前によく確認せずに書類にサインすると、後でとんでもない内容だったことに気付くっていう風刺的な開幕はいいのだけど、このあとで家族の絆とかエネルギー資源問題とかが出てきて、変に生真面目なサブプロットを設定してるくせに、すっごいヌルい着地をみせる。ファンタジーに寄りすぎて緊張感がない。
だいたい、ひまわりが宇宙のプリンセスになってしまう理由がチンケだし、そもそも「今から教訓的な物語をやりますよ」って姿勢、それ事態がクレヨンしんちゃんらしくない。
しんちゃんの醍醐味は、子供の行動に振り回される大人の滑稽さと、子供の背丈にまで視線を落としてみたときの世界に対する非力さ。本作にはそれがない。
後半で孤軍奮闘するしんのすけの姿と、強烈な御都合主義によって達成される宇宙の調和から伝わってくるのは、虚しさだけだ。