教授

理由の教授のレビュー・感想・評価

理由(2004年製作の映画)
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本作は宮部みゆきの原作というよりも。
大林宣彦監督の映画作品なのである。

所謂緻密な人間ドラマ、であるわけがない。

夥しい人間たちと、膨大なセリフとカット数。
「事件」に対して目まぐるしく関係者(?)たちのインタビューが流れ、浮き彫りになっていくのは当事者の人生ではなく、その輪郭。周辺のことばかり。

この映画が語ろうとしているのは、東京という街の時間の流れと、その中で失い続けて、現代に呆然と立ち尽くして翻弄されていく、現代を生きるすべての日本人の話である。

老若男女、様々な人たちが一時の繁栄と、それが形骸化していく中で街ごと、ズタズタに壊されていく。
戦争が終わってからの日本が、求めて、求め続けてきた結果の、壊れた人間関係たちの落日のような物語であるが…。

しかし。それでも…という世の中とか社会とか時代とか。そういう大きな流れがあっても。
不穏な空気の中で。様々な閉塞感の中でも。
ささやかにも人間は繋がり庇い合って、最後には「人間舐めんな!」という記録。
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