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八日目のtakのレビュー・感想・評価

八日目(1996年製作の映画)
3.5
「レインマン」と比較されがちな内容だが、これは別物。確かに「レインマン」も大作だらけの80年代には希有なヒューマンドラマであった。しかし、スター中心の配役といい、カジノでのハラハラといい、やはりエンターテイメント色が強い。その点において、「レインマン」はメッセージ性と娯楽を共存させ得た成功作だった。

さて「八日目」の中には、「レインマン」で描かれなかった重要な事がある。それは現実の重さであり、人間関係のすばらしさ。映画は冒頭からファンタジー色が強いが、次第にダウン症患者とその家族の現実が、具体的に目の前に提示される。騒動に巻き込まれる主人公の医師が、次第に変わっていく様子が描かれる。

例えばパスカル・デュケンヌ演ずる患者の家族が彼を引き取ることを拒む場面や、彼の性の問題に触れるところ。そして美しくも悲しいラストへとすすむ。ファンタジーという色のオブラートに包みながらも、ところどころに顔を出す現実。そして何よりも、実際にダウン症患者であるデュケンヌを主役に据えるという現実。人間そのものの魅力が、物語を一層深めてくれた、と僕は思う。

ただ批判もあるようだ。”映画以外のところで感動させる映画”というのがそれだ。患者に純粋無垢なイメージを押しつけてるようにも確かに受け取れる。そして"蒙古症"と差別的な呼称があるダウン症を、わざわざモンゴル人風にビジュアル化するのはやりすぎ。今の感覚なら差別的表現と言われても仕方ない。

問題点はあるけれど、人間同士が触れ合うことで理解し合えることの大切さが心に残る映画。現実世界があるから映画も存在しうる。映画という幻想を観ることで、現実を再認識するのも悪くない、とは思うんだけどな。
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