Yoshishun

アンブレイカブルのYoshishunのネタバレレビュー・内容・結末

アンブレイカブル(2000年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

“ヒーローがいるからヴィランもいる”

アメコミヒーロー映画の記念碑的作品『ダークナイト』でも語られた、ヒーローとヴィランの存在意義。ヒーローが街の守護者として暗躍できるのは、街の平穏を脅かすヴィランがいるからこそ。どちらも存在することでヒーローのいる世界は成立している。

そんなヒーロー映画あるあるに、アメコミオタクのシャマラン監督が斬り込んだらどうなるか?
ヒーロー映画には全く見えないヒーロー映画、それが本作である。

130人もの乗客が死亡した列車事故にて、唯一無傷で生還したデイヴィッド。産まれた時から病気や怪我に見舞われてことのない彼には、悪を読み取る力をも備えるスーパーヒーロー的存在。そんな彼にヒーローを求めるオタクのイライジャが現れる。産まれた時から両腕両足粉砕骨折、一般人より骨が酷く脆く折れやすいことから、自らを“ミスターガラス”と呼称している。この対照的すぎる2人の出会い、片や家族にも認められる真のヒーローとして、片や肉体ではなく頭脳で翻弄する真のヴィランとして敵対していく過程が描かれる。

そりゃ『シックスセンス』のようなどんでん返しがあるわけではないので、シャマラン監督に何を求めるかで本作への評価は大きく変わる。ある意味、ミスターガラスは、シャマランがアメコミヒーローに抱いていたヴィラン像そのもので、シャマラン自身を投影したもののようにも思う。ヒーロー映画の時代を先取りしすぎた、早すぎる次世代ヒーロー映画だったのかもしれない。

デイヴィッドを演じたブルース・ウィリスは、違うベクトルでダイ・ハードな役どころなのはキャスティングの妙だと思うが、イケイケなアクション俳優とは真逆の、家族関係に悩む冴えない父親を演じているのは新鮮といえる。また、ジェスチャーでさえも騒がしいサミュエル・L・ジャクソンが持ち前の話術だけで如何にも詐欺師じみた狂人を演じきるというのも素晴らしいものだろう。

一番緊張感のあるシーンが、息子が父親が本当に不死身かどうかを確認するため銃口を向ける場面というのもシャマラン監督らしい。ヒーロー映画でありながら同時に家族映画の表層も持つ本作ならでは。

どうしても地味さが勝つし、退屈な場面もあるにはある。とっつきにくいヒーロー映画ではあるものの、シャマラン監督らしさが凝縮された異色ヒーロー映画としての面白さは十分にある。およそ20年の時を経て完結するアンブレイカブル3部作かどのような結末をみせたのか気になるところだ。
Yoshishun

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