がぶりえる

アンブレイカブルのがぶりえるのレビュー・感想・評価

アンブレイカブル(2000年製作の映画)
4.4
選ばれた男と選ばれなかった男
もしくは、ヒーローとヴィラン

シャマランを甘く見ていた…。
個人的に「シックスセンス」と「スプリット」がイマイチハマらず、なんとなく遠ざけていたシャマラン作品。本作も正直期待値は全然高くなかったのだ。
そんなシャマラン二連敗中の僕だったが、「アンブレイカブル」は見事にハマった。おったまげた。めちゃくちゃ面白い。

自分の中にある隠された能力に気付きながらも自分がヒーローであることを否定し、憂鬱な日々を送る男、ディヴィッド。 
そんな彼に接近し、彼がスーパーヒーローであることを疑う、謎のヒーローオタク、イライジャ。

まず、誰よりもヒーローを愛し、憧れを抱いていたはずの男イライジャがヒーローとは対極の存在であるヴィランに成り下がってしまったことへの悲しさが一番心に来た。生まれつき体の弱かった彼がヒーローへの憧れからヒーローを探しだそうとするのだが、いつの間にか自分自身が悪になっていたのだ。これが妙に説得力がある。好きなものがあればそれを一目お目にかかりたいという願望は誰にでもあるし、憧れや好きの気持ちが強すぎるあまり正しい道を見失い、それとは相反する存在に成り変わってしまう事は我々自身に当てはめてみても共感できることではないだろうか。イライジャはサイコパスなのではなく、運命に味方されなかった孤独で悲しい男なのだ。

一方、デヴィッドは選らばれた男でありながら自分の特別さを否定し続けている。つまり、勇気がない上に自身も持てないのだ。その証拠に、奥さんとの関係は冷めきり、息子ともあまり上手くいってない。自分の能力のことや自分に課せられた課題に気付いていながらも、目を背け続けている彼の姿にもどこか共感できる所がある。そんな彼をヒーローへと導いてくれたものと言えば、息子の父を信じる気持ちであり、奥さんの深い愛であり、そしてイライジャという存在なのだ。その全てが彼を目覚めさせる大切なものなのだ。しかし最終的には、自分を信じられるか?が一番肝心なのである。

こんなに地に足ついたヒーロー映画は他にない。
確かに変な設定だし、一風変わったストーリーだが、人間の真理と人生の教訓が詰まっている様に感じた。