和桜

アンブレイカブルの和桜のレビュー・感想・評価

アンブレイカブル(2000年製作の映画)
4.6
「朝悲しみで目覚めるのは自分のやるべきことをしていないからさ」
フィラデルフィアで乗客131人が死亡する列車事故が発生。ただ一人生き残ったデヴィッドは、自身に一つの傷すらないことに困惑しながら奇妙な手紙を受け取る。
手紙の差出人の名はイライジャ。骨形成不全症という難病にかかりアメコミ収集家でもある彼は、自分のような脆い体の人間がいるのならその対極にある壊れない体を持つ人間もいるはずだという信念からそうした人間を探し求めていたのだった。

この作品は対照的な二人を描いた一風変わったヒーロー映画とも見れるし、デヴィッドの謎をこの監督が得意とするサスペンス手法で描いたものとしても見れる。
どちらとして見るかで印象や評価が大きく変わってくるが、この二つのジャンルのバランスが上手く噛み合っていて伏線も様々に散りばめられている。

アメコミを題材にしたものという事前知識から見始めた自分がまず驚いたのは、ヒーローをテーマにした映画でありながらアクションシーンがほぼない点。
あるのは、デヴィッドが困惑しながらも家族と共に自身の過去と現在に立ち向かっていくヒューマンドラマと、イライジャのヒーローは現実に存在するのだという狂気的な信念。
ここでは悪役との幾度にも渡る激しい死闘や最後の戦いがあるわけでもなく、多くの人間を救い街中から称賛や批判をされることもない。
それはまさにつかみどころのない監督である「シャマランのヒーロー映画」みたいなもので、その描き方があまりに強烈すぎて痺れた。
アメコミをできる限り現実に近づけようとする試みから派手さは全くないんだけど、それが独特の雰囲気を生み出して見終わった後も中々頭から離れてくれない。


悪や正義だけでなく、作中では幾度となく対極的な関係が語られる。
鋼の男とガラスの男、強者と弱者、現実とフィクションなどこれらは互いに惹かれあいそうすることで成立している二元論を否定するかのような世界観。
そしてその焦がれが強い信念となる。
「ウォッチメン」などの勧善懲悪では語りつくせない、結局の答えが見つからない作品がしみじみ大好きなんだなあと改めて感じてしまいました。


そして、シャマラン監督による新作「glass」の制作発表により、この映画はシャマラン・ユニバースの第一作目となった。
アンブレイカブル→スプリット→glassという流れで同一世界での物語が描かれる予定。
だから、最後が消化不良で終わってしまった人も一作目の出会いの物語として見ることが出来るようになった!
もちろん、自分みたいに単体としてもはまる人は狂おしいほどはまる映画だと思う。いや、思いたい!
和桜

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