信仰深い人は、才能とは神から与えられる物であると認識しているようだ。
若き天才モーツァルトの驚くべき才能が理解できるほどには才能がある作曲家サリエリ。これまで、真面目に誠実に生きてきた自分には才能を与えず、だらしのない、下品なモーツァルトという男に超越した才能を与える神。彼の忠実な信仰心が憎悪へと変貌する様子を、モーツァルトが作った傑作オペラと共に丁寧に描いた作品である。
サリエリの苦悩は人間が持つ普遍的な感情である。どんなに努力してもどうしようもないことはあるのだ。人生のはかなさ、やるせなさを思い知らされ、なんとも言えぬ感情に浸ることができるであろう。
