キャッチ30

アマデウス ディレクターズ・カットのキャッチ30のレビュー・感想・評価

4.2
「凡人は天才には勝てない」というのは常套句だが、それがこの映画にも当てはまる。

オーストリア皇帝の宮廷作曲家だったサリエリは悪夢にうなされ、自殺を図る。入院した病院で面会者の神父に彼は「モーツァルトは自分が殺した」と告げる……。

題名はモーツァルトのミドルネームから採られているが、主人公は彼ではなく、サリエリの方だ。つまり、サリエリの視点からモーツァルトの半生が語られるという仕組みとなっている。

脚本を担当したピーター・シェイファーはサリエリとモーツァルトのキャラクター像をシンメトリックに描写している。礼儀正しいが凡庸なサリエリと愚鈍だが天才的な作曲を手掛けるモーツァルト。この二人を対照的に描くことで天才に対する凡人の嫉妬が際立ってくる。

サリエリはモーツァルトに対して憧憬と嫉妬が同居し、さらに彼の才能を的確に見抜いてしまったことから絶望を深める。サリエリは神への信仰を捨てると同時に悪魔の化身と化すようにモーツァルトへの妨害を始める。果たしてこれは神のいたずらなのか。それとも、いくら努力を重ねても天才には勝てないという教訓なのだろうか。