南アフリカの今。
スラムに暮らす少年ツォツィ（「不良」という意味の通り名）は、金を奪うために男を殺しても、仲間を殴って顔を壊しても、金持ちの家の女を銃で撃っても、その女の車を奪っても、なんとも思わない（ように見える）くらいの奴なんだけど、それがあどけない表情を残す少年というのが、見る者を複雑な気持ちにさせる。両親に捨てられて、一人で暮らしているようだ。
そして本題はここから。その奪った車の中には、産まれて間もない子供がいた。ツォツィはその子を迷った末に自分で育てることにするという話。
赤ん坊の泣き声というのは、少年にそういう気を起こさせるほどの、ある種の力があるのかもしれない、というのが最初の印象（いってしまえば誘拐なんだけど、それは置いといて）。
主人公がただのワルのヤクザとか、大人だったら、映画として成り立たないだろう。少年だからこそ成り立つ成長物語というところに、人間への尊厳が見てとれる。
ラストシーンはちょっとどうなのって思ってしまったど、ボツになったラストのカットが特典に入っていて、個人的にはそっちの方がよかった。しかしいずれにせよ、ツォツィのその後を考えるとつらい。その気持ちがこの映画の伝えたかったことかもしれない。
