スラムの現実を描いた作品。
この手の作品は何作か観てきたけれど他と比べると一つ一つのエピソードやストーリーは劇的にインパクトがある訳ではなくその上、尺も短め。
にもかかわらず深く心に刺さって止まないのは主人公の醸し出す深い闇と表情の変化だった。
冒頭のざらざらした映像と激しいラップの音楽、そして4人組のツォツィ(不良)
中でも名前を持たない主人公ツォツィの一際放つ冷たいオーラには恐怖すら感じた。
アパルトヘイトの終焉後の南アフリカを舞台に尚も蔓延る人種格差と黒人の間での格差社会。そんな中で善悪の境など区別出来るはずも無く、ただ生きる為の糧は暴力と犯罪だった。
時折フラッシュバックされる満たされなかった子供時代に同情すれど差し引き出来ない非道ぶりに救いを見い出せないでいた。
けれどカージャックがもとで赤ん坊を育てる事になったツォツィの心に蘇ったのは人の心だった。オムツ替えのシーンを初め無知識の中での赤ん坊の扱いには思わず目を覆いたくなるものの無垢な命に触れた彼の表情は間違いなく変化していた。
この赤ん坊のようにツォツィもまた無垢で愛情に飢えた赤ん坊だったのは同じ。
母親にハグされることも無く父親からは冷たくあしらわれ土管暮しでどうして真っ当な道を歩めるだろうか、、、
かと言って犯してしまった罪は決して取り返しのつかない事に違いない。
ラスト、冒頭映し出された表情と打って変わったあの表情の先に果てして希望はあるのだろうか、、、