<概説>
かつて三人は親友だった。
しかし一人が暴行され疎遠となった。
そして25年後。一人の娘が殺害されたことで、彼等の停滞した関係は再び動き始める。嘘とエゴで舗装された物語は、必然破滅的な結末へ。
<感想>
『運び屋』にしても。『グラン・トリノ』にしても。
イーストウッド映画が感動とされているのに納得しつつ、一方でどうしても腑に落ちないところがありました。
『ミリオンダラー・ベイビー』のこと忘れてないかと。
自分がイーストウッド映画を見るにあたって常に感じるもの。それは観客向けの感動ではなくて、イーストウッド監督個人が納得するための軸でした。
登場人物はそれぞれが軸を持っている。
他人に間借りした思想ではなくて、自分から一本貫いた人生の軸。寄り掛かるためではなくて、姿勢を正すための軸。
それを果たせなければ生きているとは言えないし、果たせなくなったならば破滅したほうが、余程私は生きているのではないかと。
この軸は俗にエゴイズムとでも言うのでしょう。
『運び屋』よりも。『グラン・トリノ』よりも。娯楽性はともかくとして、監督のエゴイズムが凝縮されたのはこちらに違いありません。
それゆえ余計に映画評価はままならんなあと悲しくなったり。本作をカッコヨクないからと嫌えなかったり。複雑な心境。
言えることは。本当に。監督の人生観が身に沁みます。