みおこし

渚にてのみおこしのレビュー・感想・評価

渚にて(1959年製作の映画)
3.8
未来のない映画ほど観ていて辛いものは無いですね...。

1964年、第三次世界大戦が勃発した経緯の中で、核爆弾のコバルト爆弾による高放射線曝露で北半球は壊滅。一方、南半球のオーストラリア・メルボルンでは市民たちは平凡な暮らしを送りつつも、迫り来る核の汚染に怯えていたが...。

壮大な反戦叙事詩の、スタンリー・クレイマー監督による映画化作品。空想上の設定といえども、十分今もあり得るストーリーなのが背筋が凍るほど恐ろしいです...。
一度でも核爆弾を投下したら、その国どころか世界が破滅してしまうと思うと、本当に胸を打たれます。文字通りの世紀末に向かって突き進まざるを得ない人々の苦悩と葛藤をグレゴリー・ペック、エヴァ・ガードナー、フレッド・アステア、アンソニー・パーキンスという最強のキャストで再現しています。
メインキャスト4人とも最高なのですが、特にガードナーとアステアの熱演には目頭が熱くなりました...!終末に向かう中でも、妻子を亡くした孤独な軍曹に対して、儚い想いを寄せるという切なすぎる役柄のガードナー。そして、持ち前のダンスを完全封印してシリアス演技に挑んだアステア。オスカーの助演男優賞にノミネートされた『タワーリング・インフェルノ』での詐欺師の役も鳥肌ものの演技だったのですが、壮絶な最期を遂げる原子学者役もハマり役。セリフ一つ一つが刺さるし、何よりラストのあの表情...。トラウマものです。
彼のファンの方は、ミュージカル俳優として以外の一面を是非ご覧ください!

かなりのシビアな設定と、終始漂う物悲しい雰囲気に息が詰まりそうになりますが、まさに映画史に燦然と輝く傑作。一見の価値ありです!
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